役員報酬を損金にするためのルール

経営者や役員に対する役員報酬は、従業員の給与とは違い、税務上さまざまな取り決めがあります。例えば、従業員給与は基本的に全額損金に算入できますが、役員報酬は毎月同額でなければならないなど、一定の方法で支給されたものでなければ損金に算入できません。
どのような役員報酬なら損金算入できるのか?基本的なルールを紹介していきますので是非ご参考にしてください。

Ⅰ定期同額給与

1ヶ月以下の一定期間ごとに定期的に支払われ、それらが毎月同額である報酬を定期同額給与といって従業員給与と同様に損金算入できるようにしています。
例えば、3月決算の会社の場合、4月から翌年3月までの12ヶ月の支給時期における支給額が同額である給与をいいます。税務署への届け出は不要です。
なお、著しい業績悪化のために減額する場合は損金に算入できるなど、例外規定はあります。とはいえ、損金に算入するためには上記のように定められた期間内の支給額を同じ額にする必要があります。

Ⅱ事前確定届出給与

役員に対する賞与も以下のような条件で損金に算入できます。
・前もって所轄の税務署に「事前確定届出給与に関する届出書」を提出する
・届出書に記載した通りの支給日、金額で支払う

この「事前確定届出給与に関する届出書」には申請期限があります。それは以下のうち、早い方の期日です。
・株主総会などの決議をした日から1ヶ月以内
・事業年度開始日から4ヶ月以内

このように事前確定届出給与は、事前に納税地の所轄税務署長に届け出なければなりません。そのため、手続きは煩雑ですが、支給額や支給時期を自由に決めることができます。
ただし、届出書に記載した対象者・支給日・支給金額の内容通りに支給しなければ、その全額が損金に算入できなくなってしまうため、慎重に検討・実施するようにしましょう。

Ⅲ利益連動給与

決算時に有価証券報告書を作成しますが、そこに記載されている「利益に関する指標」を基準にして役員に支払う給与は、損金算入できます。要するに1年間の貢献度に対する賞与です。ただし、これには同族会社は含まれないため、株主が社長のみ、あるいは役員は家族だけといった会社は対象外です。
また、上記3つの報酬以外で損金になるのは、退職金、ストックオプション、取締役部長のような役員でもあり従業員でもある「使用人兼務役員」の使用人部分の給与などです。

Ⅳ役員報酬を変更する場合のスケジュール

定期同額給与と事前確定届出給与については、それぞれ金額などを変更する際の期限があります。例えば、3月決算の場合、定時株主総会は6月末までに開催しなければなりません。
定期同額給与の変更は、原則事業年度開始の日から3ヶ月以内とされているため、6月末がその期限になります。
事前確定届出給与は、定時株主総会による決議から1ヶ月以内、または事業年度開始の日から4ヶ月以内のいずれか早い日が届出期限になります。
例えば、6月20日に株主総会が開催された場合には、7月20日と7月31日を比較し、早い日である7月20日が届出期限となります。

このように役員報酬については、法人税法上の損金算入規制があり、柔軟な支払いが難しいことがお分かりいただけたと思います。
一方で役員報酬についてはキャッシュの流出がともないますので、事業計画をしっかり立てた上で役員報酬額を決定し、確実に損金算入できるようにしておきましょう。

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