社員旅行の税務のポイント

 春が近づいてきて、そろそろ普段がんばっている従業員の慰安や英気を養ってもらうために社員旅行やレクリエーションを企画しはじめる会社も多いのではないでしょうか。
 今回はそんな社員のための企画が全額経費で落とせるのか、落とせないとしたらどんな場合かを考えていきたいと思います。

1.社員旅行を経費にできる?

 結論から言うと、社員旅行は福利厚生費として経費で落とすことができます。経費にすることで当期の利益を圧縮することができ、法人税の節税につなげることができます。
 社員旅行の規模は、会社全体の大規模はもちろん、工場や支店ごとなどの小規模な社員旅行も対象です。社員旅行の費用として考えられるのは、飛行機や電車など移動にかかる交通費、旅行先での宿泊費、旅行期間の食事代などです。
旅行費用の一部を給料の天引きなどで事前に徴収していた場合はどうなるでしょう?不参加の人にその分を現金で返すのは何ら問題ありません。会社負担分は経費として処理することができます。
 では、「事前徴収」していなかった場合に、自己都合で参加しなかった社員に対して、会社が負担した旅行費用分を、例えば5万円支払ったらどうなるでしょう?この場合、それは福利厚生費とは認められず、給与になります。それだけでなく、旅行に参加した人も全員5万円分は給与とみなされ、所得税の課税対象になります。社員が「旅行か現金か」の選択ができることになるからです。

2.経費にできる社員旅行の要件

Ⅰ従業員の過半数以上が参加

 社員旅行として、従業員の半数(50%)以上が参加する必要があります。この場合の従業員には正社員だけでなく、非正規雇用(パート・アルバイト等)も含まれます。工場や支店ごとに行う場合でも、半数以上の参加で経費とすることができます。

Ⅱ旅行期間が4泊5日以内

 福利厚生費として認められるのは、4泊5日以内の社員旅行までです。ただし、海外旅行の場合は、現地の滞在日数のみを数えるため、移動中は日数に含まれません。

Ⅲ1人あたりの旅費が10万円程度であること

 1人当たりの旅費の金額上限は明確に規定はありませんが、「社会通念上妥当な範囲」とされています。ではどのくらいの金額が「妥当」なのでしょうか。

  • 3泊4日・旅行費用15万円(内会社負担7万円)・全員参加 → 非課税
  • 4泊5日・旅行費用25万円(内会社負担10万円)・全員参加 → 非課税
  • 5泊6日・旅行費用30万円(内使用者負担15万円)・50%参加 → 課税
    国税庁「従業員レクリエーション旅行や研修旅行」より

 上記の通り、4泊5日以内、かつ全員参加であれば非課税になることが明確にされています。
  もしも豪華な旅行として税務調査において福利厚生費として否認されると、経費には計上できず「現物給与」として課税の対象となってしまいます。これらの3つの要件を満たさずに福利厚生費として処理していた場合、税務調査で指摘をうける可能性があり、もし追徴課税の対象と認定されると、正しく申告した場合よりも高い税率で(最大で約1.4倍)支払うことになるので注意しましょう。

3.社員旅行を経費にするためには

Ⅰ社員旅行を行う旨を就業規則に明記する

 税務調査では、私的な目的ではなく社員全員への公平性があったかなどを確認されます。そのため、就業規則などで社員旅行を定期的に行う旨を明記しておくことで、全社員に対して福利厚生目的であることをはっきりと示すことができます。

Ⅱ証拠書類を保管する

 本当に社員旅行が行われたのか、社員の慰安目的かを証明するために以下の書類は少なくとも保管しておきましょう。

  • 日程表
  • 旅費の請求書・領収書一式
  • 施設のパンフレット
  • 現地での集合写真

4.社員旅行と認められないもの

Ⅰ旅行内容が「プライベートな旅行」と変わらない場合

3つの要件を満たしていても福利厚生費として認められない場合もあります。

  • 社員旅行について会社指定の旅行代理店を通じるものの日程や行先など従業員が自由に決めていた。
  • 従業員の配偶者及び二親等以内の親族も会社負担で参加が認められた。
  • お土産代以外の旅行費用(交通費・宿泊費・食費・遊興費など)は会社負担。

 従業員が自由に日程や行先を決めかつ家族同伴であることから、従業員のプライベートな旅行に変わりなく、その費用を会社が負担しただけと考えられるためです。

Ⅱ特定の社員、または役員のみで行く旅行の場合

 特定の社員が対象だったり、役員のみで旅行に行った場合は、課税となるケースがあります。たとえば、優秀な成績の社員を表彰するなどして、特定の条件の社員を連れて行く旅行は、特定の社員に支給された給与所得と判断され課税の対象となります。同様に役員のみで行く旅行は、役員賞与とみなされ所得税の課税対象となります。

5.まとめ

 処理を間違えたばかりにせっかくの社員旅行で後々嫌な思いをしないためにも、ポイントを押さえて楽しくリフレッシュ&賢く節税をしましょう!

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