台風被害による雑損控除について

昨年は台風が立て続けに発生し、被害に遭われた方も多いと思います。災害による住宅や家財などに被害を受けた場合には確定申告で雑損控除による税金の一部または全部の還付または減免を受けることができます。今回は特に台風被害による雑損控除について説明します。

1.雑損控除の概要

災害や盗難、横領などにより、資産について損害を受けた場合には、医療費や社会保険料控除と同様、所得から一定の金額を差し引くことが認められています。
その対象となる災害などは、次の5つと定められています。

① 震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
② 火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
③ 害虫などの生物による異常な災害
④ 盗難
⑤ 横領

2.対象となる要件

災害を受けた資産がすべて雑損控除の対象となるわけではありません。下記の対象者、資産に当てはまる必要があります。

Ⅰ対象者
・納税者
・納税者と生計を一にする配偶者やその他の親族で、その年の総所得金額等が38万円以下の者

Ⅱ資産
・棚卸資産
・事業用固定資産
・生活に通常必要でない資産

生活に通常必要でない資産・・・別荘など趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で保有する不動産。貴金属(製品)や書画、骨董など1個又は1組の価額が30万円超のものなど生活に通常必要でない動産

3.雑損控除の金額

実際に、雑損控除を受ける際は確定申告で行いますが、雑損控除の金額としては、次のうち、いずれか多い方の金額を計上します。

  • 「差引損失額」-「総所得金額」×10%
  • 「差引損失額のうち災害関連支出の金額」- 5万円

ここで知っておきたいことは、損失額が大きくて、その年の所得金額から控除しきれない場合は、翌年以降(3年間が限度)に繰り越し控除できることになっているため注意しておきましょう。

差引損失額は、災害で資産に損失が発生し、それをカバーするために使ったお金から、火災保険などの保険金を差し引いた金額が差引損失額になります。計算式に表すと下記のようになります。

「差引損失額」=「損害額」+「災害関連支出」-「保険金など」

ここでいう「災害関連支出」の金額は、災害により滅失した住宅や家財などを取り壊したり、除去したりするために支出した分です。

雑損控除以外にも、住宅又は家財の損失額が、その価額の2分の1以上被害があり、その年分の所得金額が1,000万円以下の場合に、所得金額に応じてその年に限って所得税を軽減・免除する「災害減免法」という優遇措置がありますが、最大で3年間の控除が受けられることなどから、一般的には「雑損控除」が有利だといわれています。

4.「損失額の合理的な計算方法」の活用

有利と言われる雑損控除ですが、その適用を受けるための最大の問題点が「損失額」の算定です。

国税庁のホームページでは、①住宅の主要構造部に損壊がある場合で、かつ、②損害を受けた資産について個々に損失額を計算することが困難な場合には、「損失額の合理的な計算方法」により計算して差し支えないとされています。

Ⅰ住宅に対する損失額の計算

①住宅の取得価額が明らかな場合

損失額(注1、2)=(住宅の取得価額 - 減価償却費) × 被害割合

(注)1 保険金、共済金及び損害賠償金などで補てんされる金額がある場合には、その金額を差し引いた後の金額が損失額となります。ただし、被災者生活再建支援法に基づくものは除きます(以下同じです。)。
(注)2 損失額には、損害を受けた住宅等の原状回復費用(修繕費)が含まれます。

②住宅の取得価額が明らかでない場合

損失額 =〔(1㎡当たりの工事費用 × 総床面積)- 減価償却費〕 × 被害割合

Ⅱ家財に対する損失額の計算(生活に通常必要な動産で、車両を除きます。)

①家財の取得価額が明らかな場合

損失額 = (家財の取得価額 - 減価償却費) × 被害割合

②家財の取得価額が明らかでない場合

損失額 = 家族構成別家庭用財産評価額 × 被害割合

Ⅲ車両に対する損失額の計算

損失額 = (車両の取得価額 - 減価償却費 )× 被害割合

(注) 車両については、生活に通常必要な資産と認められる場合に、雑損控除の対象となります。なお、生活に通常必要であるかどうかについては、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族が、専ら通勤に使用しているなど、車両の保有目的、使用状況等を総合勘案して判断することになります。

5.まとめ

サラリーマンは会社で年末調整をしてくれるので、通常は所得控除を改めて申告する必要はありませんが、雑損控除、医療費控除、寄付金控除の3つについては会社で年末調整をしてくれないので、自分で確定申告をしないと損をしてしまいます。いずれも該当があれば、確定申告をすれば所得税が還付されますので、忘れずに申告を行なうようにしましょう。

言葉だけだとわかりにくく、実際に「災害関連支出」はわかりにくいので、災害にあわれた方は個別に相談しましょう!

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