
目次
1. 従業員に対する災害見舞金等
法人が災害により被害を受けた従業員又はその親族に対して支給する災害見舞金は、一定の基準に従って支給すれば福利厚生費として損金の額に算入することができます。
ここで言う一定の基準とは、次の2つを満たすものが該当します。
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被災した全従業員に対して被災の程度に応じて支給されるなど、各被災者に対する支給が合理的な基準であること。
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見舞金の金額が、受給者の社会的地位等に照らし、災害見舞金として社会通念上相当な金額であること。
また、従業員が災害により損害を受けたことによる見舞金を勤務先から受ける場合には、社会的地位、贈与者(勤務先)との関係に照らして社会通念上相当と認められる場合は、個人の所得税は課されません 。
したがって給与として源泉徴収は不要になります。
災害により臨時に多額の生活資金が必要となった従業員が勤務先から、生活資金に充てるために低利又は無利息で貸付を受けた場合、その返済に要する合理的な期間内であれば、通常の利息相当額についても課税しなくてよいこととされています。
2.取引先に対する災害見舞金等
災害によって通常の営業が困難となった取引先へ、被災前の取引関係を維持・回復するために贈った災害見舞金や、事業用資産を供与するために掛かった費用は「交際費等」に該当しないものとして取り扱われ、全額が損金の額へ算入されます。
これは取引先の復旧過程において支出されるものであり、取引先を支援することで、自社が被る損失の回避に要する費用として考えられるためです。
参考までに取引先に対する災害見舞金の相場として、全壊・流出・全焼:10万円、半壊・半焼・一部流出・床上浸水・家財冠水:5万円、その他:3万円になります。
これは例なので、昨今の災害による被害等を加味し、企業内で設定しておくと良いでしょう。また、世帯主か非世帯主か、持ち家か借家かでも相場は変わってくる場合が多いようです。
したがって、このような災害見舞金を支出するに当たって、その取引先の被災の程度、取引先との取引の状況等を勘案した相応の災害見舞金であれば、その金額の多寡は問いません。
また、災害見舞金を支出した場合に、取引先から領収書の発行を求め難い事情にあることも考えられますが、このようなときには、法人の帳簿書類に支出先の所在地、名称、支出年月日を記録しておくことが必要です。
3.取引先に対する売掛金等の免除等
災害を受けた取引先の復旧過程において、復旧支援を目的として売掛金、貸付金等の債権を免除する場合には、その免除することによる損失は寄附金又は交際費等以外の費用として損金の額に算入されます。
既契約のリース料、貸付利息、割賦代金の減免を行う場合及び災害発生後の取引につき従前の取引条件を変更する場合も、同様に取り扱われます。
4.取引先に対する低利又は無利息による融資
災害を受けた取引先の復旧過程において、復旧支援を目的として低利又は無利息による融資を行った場合における通常収受すべき利息と実際に収受している利息との差額は、寄附金に該当しないものとされます。
5.取引先の役員等に個別に支出する災害見舞金
被災した取引先の役員や使用人に対して個別に支出する災害見舞金は、取引先の救済を通じてその法人の事業上の損失を回避するというよりは、いわゆる「お付き合い」的な性質のものであると考えられることから「交際費」として取り扱われます。(個人事業主に対するものを除く)。
ただし、「取引先の役員や使用人」であっても、自己の役員や使用人と同等の事情にある専属下請け先の役員等に対して、自己の役員や使用人と同様の基準に従って支給する災害見舞金は、交際費等に該当しないものとして取り扱えます。
なお、個人が受け取った見舞金がその受贈者の社会的地位、贈与者との関係等に照らし社会通念上相当と認められるものについては、贈与税及び所得税の課税の対象とはなりません。